ポエトリーリーディングと先輩と
今日、というか昨日、ポエトリーリーディングという催しを見に行った。地元の先輩と久しぶりに会いたかったのと、ポエトリーリーディングという未知の表現に対する好奇心が半々の理由だった。
ポエトリーリーディングというのはなんというか不思議だった。それは初めての体験だったからというのもあるかもしれないが、音楽とも取れるし、朗読とも取れる、それでいて発表する人によってその表現の仕方が違って個性が出てたのはとても興味深かった。
僕は時折文章書くのが上手いねと言われるし、曲を作るうえで作詞もするし、たまに小説も書くけど、どうもポエトリー、詩を書くセンスは特にないと自覚している。このブログ上でも詩を何本か上げているが、どれも稚拙で、そもそも詩の書き方も解釈の仕方も全くもって無知だ。
だからこそ(即興の人もいたが)事前に詩として言葉を紡ぎ、観客を前に、自分なりにそれを口に出して表現するのは、とても凄いことだと思う。かなりの演者がいたが、その中でも心に響くポエトリーリーディングを披露する人は何人もいた。そして詩自体も、表現の工夫も十人十色だった。
僕はバンドをやっていたし、ちょくちょく曲も作ってたし、作詞にはある程度の自信はあったにしろ、それは歌であり、言葉の後ろでは楽器やサウンドが支えてなりたっていた。語弊を恐れずにいうのならば、綴った言葉だけでは成り立たないから、サウンドを、曲としての表現を、稚拙な言葉の隠れ蓑にしていたのだ。(とはいっても僕の作る曲はオケも優れたものとは決して言えない稚拙なものなのだけれど)
それに対してポエトリーリーディングをする人たちは詩だけを、言葉だけを、抑揚など表現の工夫や個性はあるにしろ、それだけで戦っていたのだ。
この世には色んな創作物、表現がある。小説、音楽、映画など、様々なものがあるけれど、ポエトリーリーディングはそれらよりも率直で、言うなれば言葉一つ、詩一つで、まるで丸腰で、隠れ蓑なしで観客へ向けて放っているのだ。
僕はそれをかっこいいと思った。別に勝ち負けとかそういう話ではないかもしれないけれど、負けたような感覚に陥った。僕は言葉だけの力をあなどっていたのかもしれない。それだけ衝撃的だったのだ。
この一日でポエトリーリーディングというものに惹かれた。面白いと思った。だから僕にとってこの夏の一時は充実感に溢れるものだった。
ちょっとポエトリーリーディングにも手を出してみようかなとも思う。詩のセンスもなければリーディングのセンスもないから、とても不安ではあるけれど、面白い世界だと感じてしまったから。
そして地元の先輩と久しぶりに会ったのも良かった。地元にいた頃からそこまで交流が深かったというわけでもないけど、とても魅力的な人で趣味も合うなと勝手に感じてたから、前から仲良くなりたいと思ってた。だから久しぶりに会えて嬉しかった。どこか以前より生き生きしていて、どこか以前よりも笑顔が増えてるのを見て僕も嬉しくなった。
静岡という地元から東京に来た知人は少ないから、静岡上がりの上京人と会うと嬉しくなってしまう。
そしてその先輩はとても素敵な人だと感じた。尊敬しているとも言えるかもしれない。
僕は高校を卒業して東京に来て、大人になって、時間が経つ度に憂鬱さが増していった。もう青春なんてないのだと、なりたくなかったつまらない大人になっていくのが苦しくて、どんどんと自分を、世界を悲観していった。
でもその先輩は違った。
僕より年上なのに、ティーンみたいな世界や周囲をひねくれた見方をしていても、誰よりも青春していた。きっと僕よりも大人になってしまったことを後悔してるかもしれないが、それ以上に青春していた。小さなことでも悩んで、でもそれよりも小さなことでも幸せを感じていて、僕がこう言うと失礼になるかもだけど、あどけなくて、少女らしさを輝かせていた。悩みつつも人生を楽しんでるように見えた。それは凄いことだ。大人になることは妥協することだと誰かが言った気がするが、先輩は大人になっても、というか大人になったからこそ、見方を変えて幸福を掴もうとしている。僕はそんな先輩が大好きだ。今の僕に足りないものを、今の僕が失ったと思い込んでるものを見せてくれる魅力的な人だ。
今日というか昨日、少し自分の人生観が変わった気がする。だからとても感謝してる。
そしてポエトリーリーディングの合間やその後飲みに行って話し足りないほど話した。好きなバンドの話、今までのお互いの思い出の話、先輩が経験してきたことの話、たくさん話した。ここ最近で一番楽しくて幸せな一日だったと思う。
それでいて先輩は優しかった。辛いときは気軽に連絡してと、また遊ぼうと、そう言ってくれた。素直に嬉しかった。仲良くなりたかった人、尊敬する人からそう言われると本当に、素直に嬉しい。
そして先輩はこうも言っていた。
「楽しいこと、幸せなことを見つけて、それを実行して、そしてまた楽しいこと、幸せなことを見つけて、それを繰り返していけばもっと人生良くなるよ」と。
それは今の僕に足りない考え方だった。だから僕も先輩みたいに小さなことでも幸せを素直に受け取って、それを糧に生きていければいいと思う。辛いことや苦しいこと、憂鬱な気分は常に僕にまとわりついてるけど、そうしていけば明日は少しでもいい日になる気がするから。
また先輩と会うのが楽しみだ。とりあえずそれまでは頑張って生きよう、そう思える。