柏原さんの日常

おるたなてぃぶな生活を

詩⑤

ある晴れた朝に君を見た
あるはずのない懐かしさがそこにはあった
君は麦わら帽子をかぶっていて
意味もなく笑っていた
ぼくらを見下ろす
向日葵のあいだを
すり抜けていく君
追いかけて、追いかけて
生ぬるい風をきって
たどり着いた先で
やっぱり君は笑っていた
意味もなく無邪気に
小麦色の肌、純白のワンピース
「この向日葵を越えたらわたしたちはどうかわるのかな」
その先はもうなかった
僕の妄想は行き急ぐ群衆にゆらいで
陽炎のように消えていった
あの子はまだ後ろにいる、
まだ手も届く
あの子もきっと同じことを思っている
それでもぼくらは振り返ることなく
何かにとりつかれたように
何ともわからない日常へ
それはきっとぼくらが出会うのが遅すぎたからで
それはきっと今のぼくらには鮮やかすぎる幻のせいで
何事もなかったかのように
一生越えることのない高層ビルのあいだを通り抜ける

僕たちに残響はない